第11章 裏で動いた恋模様
‐赤葦side‐
「赤葦、いらっしゃい。どうしたの?そんな、大荷物で。」
「いらっしゃいませ。何処か、行ってたんですか。」
店に入った途端、2人からの突っ込みを貰う。
荷物くらい、置いてくれば良かった。
冷静さを欠いた自分の行動に溜め息が出る。
旅行だと言ったら行き先を聞かれるだろうし。
幾ら鈍いりらでも、それを答えたらきとりさんの所に居た事くらいは気付いてしまうだろう。
良い誤魔化し方が思い浮かばないのは、頭の中が違う事で埋め尽くされているから。
「赤葦ー。こっち。」
返事に困っていると、小上がりの方から聞こえた声。
振り返ると、黒尾さんが手招きしていた。
「黒尾さん。待ち合わせの相手は赤葦さんですか。」
「おぅ。」
「なーんだ。今日はカウンターじゃなくて小上がりの気分とか言ったから、大事な話のある相手かと思っちゃった。」
「男同士の大事な話ですぅ。ほら、猥談的な?女に聞かれたくない話すんだよ。」
「赤葦さん、そんな話しますか。」
「男は、大体そういう話が好物だって。」
あっという間に、黒尾さんの方に話が逸れて、俺の荷物については興味が無くなったようだ。
気付かれないよう安堵の息を吐いて、小上がりに上がり、テーブルを挟んで黒尾さんの対面に座った。
自分から呼び出したのに、何から話すべきか分からず、黙り込んでしまった。