第11章 裏で動いた恋模様
‐みつside‐
頭に、重みを感じる。
それが左右に移動して、髪を荒らした。
滲んだ視界、見えるのは私に合わせるようにしゃがんでる姉ちゃんで。
片手が、私の頭に向かって伸ばされている。
「…なんで、撫でてんの?子ども扱いしないで。」
行動全てが、勝ち組の余裕に見えて腹が立つ。
手を叩いて払うと、姉ちゃんはその掌を見つめていた。
「そんなつもり、無かったけど。ごめん。」
良く言えば素直、悪く言えば馬鹿正直。
人の気分を害したと知れば、謝ってくる。
それは、私の神経を逆撫でして。
「姉ちゃん、なんかムカつく。」
「アンタに嫌われてるの、知ってる。」
「姉ちゃんも、私の事を嫌いでしょ。」
ケンカしたい訳じゃないのに噛み付いた。
いつの間にか、涙は止まって、睨むように視線を向ける。
「嫌い…と言うより苦手だけど。」
姉ちゃんは、相変わらずの無表情で、淡々としていて。
「血の繋がった妹を、無条件で見捨ては、しない。」
それでも、意志が伝わるような、はっきりとした声で、真っ直ぐ、気持ちを伝えてきた。
顔は、殆ど同じ。
だけど、決定的に私と違う所。
パッと見だけなら、無表情な姉ちゃんより、よく笑う表情豊かな私の方がモテるけど。
深く、長く付き合うなら、ヒネくれた素直じゃない思考の私より、不器用でも真っ直ぐな姉ちゃんの方が良いに決まっている。
ケージくんは、姉ちゃんとの付き合いが長い、後者であるのは確定で。
最初から伝える気すら無かった気持ちは、すんなりと失恋を受け入れられた。