第11章 裏で動いた恋模様
‐みつside‐
テツローくんが擽ってきたから、変な声を出して。
それを止めようとしている内に電話は切れていた。
折り返しを掛ける勇気は無くて、もう一度向こうから掛けてくれないか期待してた。
でも、掛かってくる事は無く。
テツローくんとじゃれている余裕も無くなって、部屋から追い出し、1人で朝を迎えた。
一睡も出来なかったのに、眠れる気がしない。
お腹も空かないし、食べる気力がない。
だけど、この場所で倒れてたりとか、最悪の事態になったら、ケージくんに迷惑が掛かる。
それだけは嫌だから、外へと出た。
自宅に帰るしかない。
居辛いのは、どちらの家でも同じだ。
家の方向に向かって歩き、角を曲がった時に人にぶつかる。
「姉ちゃん…。」
その、相手が最悪だった。
確かに、ケージくんは姉ちゃんの傍に居る為に、このアパートを選んだ訳で。
近所だから偶然でも会ってしまう可能性があるの、分かってたけどタイミングが悪い。
この人はケージくんに愛されていた。
偶々でも、妹に会ったのに表情すら変えず、声を掛けすらしない、こんな根暗女なのに。
「姉ちゃんは、ズルいよ。なんで、姉ちゃんばっかり…。」
顔は凄く似てるのに、私は利用されるだけだと分かっているから辛くて、口から八つ当たり的に声が零れる。
ついでに、涙まで出てきて、力が抜けて。
その場に座り込んでしまった。