第11章 裏で動いた恋模様
‐きとりside‐
あーぁ、キスしちゃった。
酒が入ってる訳でもないのにな。
でも、これくらいしないと赤葦は自分の気持ちに気付かないだろうから、良いか。
唇を離して、笑顔を作る。
間違っても、自分からしたのだから後悔した顔はしちゃいけない。
「何するんですか。」
「今の、キス以外の何なのか、こっちが聞きたい。」
「何でしたのか聞いてます。」
手の甲で唇を擦り、不愉快そうな顔をしている赤葦。
まだ、分からないかな。
アンタが本当に好きなの、私じゃないって。
だって、好きな人からキスされて、そんな嫌そうな顔しないでしょ。
「あら?赤葦クンは私の事が好きなんじゃ無かったかな?キスされて、嬉しくないの?ご感想は?」
直球で、赤葦が本当に好きなのはみつ、だと教えても納得はしないだろう。
だから、せめて私に向かう恋心は勘違いだと気付いて欲しい。
真剣に話をすると、キスした事が頭を過って私が照れるから、からかい混じりに問い掛ける。
寧ろ最悪、とか言われたら私のダメージの方が大きい気がするけど。
「…すみません、きとりさん。嬉しく、無かったです。」
賢い赤葦だから、私が何でこんな事をしたのか分かっていて。
「有難う御座います。」
お礼まで加えて、立ち上がった。