第11章 裏で動いた恋模様
‐きとりside‐
赤葦が、びっくりするくらいの無自覚さんだ。
昔なら、りらが誰かと2人きりで居るだけで、嫉妬して不機嫌な顔をしたのに、諦めがついている。
私に対しても同様で、きっと初めからフラれるつもりだったんだろう。
簡単に諦めの気持ちが持てるのは、恋や愛ではないからだと思う。
まだ、予想の範囲なのはりらみたいに諦めが早い性格なだけかも知れないから。
「赤葦、もしもバレーボールの試合でさ、敵う可能性が極小の強豪校と当たったら、すぐに勝てないって諦めるの?」
「…なんで、そんな事聞くんですか。」
「良いから、答えて。」
確認する為の問いを送ると、意味が分からないのか眉を寄せている。
それでも、無回答は許してやらない。
暫し、迷うように視線を動かした赤葦が、私をしっかりと見た。
「バレーの試合は、必ずどちらが勝つって有り得ないです。だから、最後の一球が落ちるまで諦めません。」
力強い、声と視線。
諦め性じゃないと分かれば、私がやってやる事は1つだ。
1分1秒でも早く、東京に帰らせてあげる。
私と家族ごっこをしている間に、諦めを付けきれない相手を…みつを、他に盗られてしまうかも知れないから。
きっと、まだ間に合う。
クロが、気軽にみつに手を出している筈がないと、信じている。
「私、用事があるから出掛けるね。赤葦は、適当にご飯食べて寝ちゃってて。明日は早いよ。」
スマホを赤葦に返して、家から出た。