第11章 裏で動いた恋模様
‐赤葦side‐
何度見ても、相手の男がどんな人かすら俺には分からなかった。
それを、一瞬で黒尾さんだと断言する。
それは、きとりさんにとって、黒尾さんがどれだけ大きな存在なのかを表していた。
「きとりさん、アンタまだ黒尾さんの事が好きでしょう。」
「は?この写真でクロだって分かったくらいで、なんで?」
未練に気付かせてやるつもりは無かった筈なのに、口からは直球で言葉が出ていた。
本人は、全く自覚が無かったようで首を振っている。
「あ、もしかして赤葦、妬いちゃった?」
「全然。」
話を逸らそうとしたのか、からかうように言われたけど、嫉妬をしたつもりはない。
寧ろ、納得した気持ちになっただけだ。
即答で返すと、きとりさんが俺の顔をじっと見て、楽しそうに笑う。
「赤葦、アンタ…さ。
…りらが、木葉クンと一緒に居ると悔しい?」
「いえ。お付き合いしているのだから、2人で居るのは当たり前でしょう。」
「私が、クロとか木兎とじゃれてんの嫌とか思う?」
「いえ。昔からそうでしたから、見慣れてます。」
続けて幾つかの質問をされても、その意図は分からず。
否定する答えを返すしか出来なかった。