第11章 裏で動いた恋模様
‐きとりside‐
誰かが待っている家に帰る。
それは、私にとって特別過ぎる事で。
もう気まずい事もない、赤葦とのプチ同居を楽しんでいた…筈なんだけど。
帰ってきたら、赤葦がキレてた。
家の中のものとか、壁とか傷付けてないから理性は残っているし。
「…あぁ、おかえりなさい。」
私には、こうして挨拶してきたから攻撃をしてくる気はないだろう。
だけど、平常心を装っているように見えるだけなのは、醸し出す雰囲気が怖いから分かる。
「タダイマ。…何か、あった?」
「いえ、別に。」
挨拶を返すついでに聞いてみたけど、答える気がないようで。
それなら、通常モードの無表情に戻って頂きたい。
眉間に深い皺を刻んで、明らかな怒りを露にしている姿は正に鬼だ。
怒りの原因を探そうと、部屋の中を見回すと、端の方にスマホが転がっている。
叩き付けでもしたのか、カバーにヒビが入っていた。
都合の悪い連絡でも、あったんだろうか。
こんな離島に来ているから、すぐに解決出来ない何かが起きたんだろうか。
スマホが、何かのヒントになると思って拾い上げる。
画面が点灯したままになっていて、それに映っていたのは、よく知っている男の写真だ。
顔が写ってなくても、私はすぐに誰か分かった。
「これで、何で怒って…。」
不思議で仕方がなくて、画面をスライドすると、それが日記に貼り付けられたものだと分かり。
日記を書いた主が、みつだという事も分かる。
「クロと、みつが…?」
「…黒尾さん?」
思わず零れた、人物を示す呟きを拾った赤葦。
私の手の中にあるスマホを覗き込んできた。