第3章 その夜、お店にて
夕方、バイトが終わるとお店の方に直行する。
すでに、お店は開店していたけど、お客さんはまだ入っていなかった。
裏方で作務衣に着替えてカウンターの中へ。
「おはようございます。」
「おはよう、りらちゃん。」
いつもなら、この挨拶だけで話が終わり、お客さんが来るまでは雑用的な作業をする。
「りらちゃん、あの、さ…。」
でも、今日はかおるさんの方が話したい事があったみたいで。
声を掛けられたから顔を向けた。
「…昨日ね、木兎に告白したよ。」
続いた言葉には、反応が出来ない。
だって、木兎さんは彼女が出来たなら出来たで騒ぐタイプだ。
昨日、遅くまで一緒にいた私達に言わなかったって事は、かおるさんがフラれたって事を意味している。
「…そうですか。」
やっと、出来た反応はこれだけで止まる。
この状態で、‘私の方は昨日彼氏が出来ました。今日お店に来ます’なんか言える訳がなかった。
話を続ける事は、気まずくて出来ない。
会話を終わらせる事を示すように手元に視線を戻して、作業を再開した。