第2章 初めて迎える朝
‐木葉side‐
嫌じゃないから来る、とか。
それ、妥協じゃね?
そんな言い方されて、お泊まりしてくれても、こっちは嬉しくねぇ訳で。
言い直し要求してみても、この言葉を扱う事が苦手な熊野には意味が理解出来なかったようだ。
まぁ、頷いてはくれてんだから、俺ン家に来たい、って行動で示してはくれてんだが。
行きたい、って口から言わせてぇっての、我儘か?
「熊野、秋紀の家にお泊まりしたい、ってオネダリして?」
こんなん、言う訳ねぇのは分かってる。
でもな、例があれば、どう答えたら良いか分かんだろ。
「…木葉さん、お家に泊まらせて下さい。」
熊野らしい、ちょっと堅い言い方。
それは、破壊力抜群で。
仕事サボって、このままコイツ誘拐しちまおうか、なんて馬鹿な事まで頭に浮かぶ。
やったら軽蔑されそうだから行動は起こさねぇが、そんぐらい、コイツと一緒にいる時間が欲しい。
それが無理なのは分かってるから、せめて帰る前にもうちょいイチャイチャしたかった。
一歩、熊野に近付くように前に踏み出す。
玄関の段差の上にいる彼女の顔は、俺より高い位置にあって。
背伸びして、キスする女側って、こんな感じで相手眺めてんだな、とか。
変な事を考えながら、首に腕を回す。
引き寄せるように、力を入れると近付く顔。
爪先立ちしなきゃなんねぇ程の差は無いが、なんとなく雰囲気的な問題で。
わざと背伸びして、軽く触れる程度に唇を重ねた。