第2章 初めて迎える朝
靴をちゃんと履いて立ち上がった木葉さん。
振り返った顔は、私の嫌いな苦しそうな笑顔ではなかった。
「じゃ、夜はその店行くな?それなら、会えるっしょ?」
寧ろ、私の好きな、唇の端を上げて歯を少し見せた笑顔で。
私が言えなかったワガママを、叶えてくれた。
「場所、どの辺?」
進められる話に従って、住所を伝えると、木葉さんは驚いた顔をした。
「そこ、さ。俺ン家、超近くね?」
「…そうですね。」
確かに、昔一度だけ行った事がある木葉さんの暮らしているマンションは、今まで偶然でも会わなかったのが不思議なくらいの距離。
多分、徒歩でも数分の場所だ。
「…な、お前が嫌じゃ無かったら、手伝い終わった後、家泊まりに来ねぇ?」
「嫌な事はありません。」
「…聞き方間違ったな。俺のトコ、来たいっしょ?」
提案された事に了承した筈なのに、何かが気に入らないようで言い直される。
今度は何と答えたら良いか分からず、黙ったまま頷いた。