第10章 墓参りはプチ旅行
妹が、先回りして、人数変更を女将さんに伝えていた。
だから、思ったよりも早く受付での話は済んで、部屋に向かう事になる。
私にも、心の準備をする時間を頂きたい。
廊下を歩いている間も考えるのは、自分の汚れた体の事で。
元からのマイナス思考もあって、この考えからは抜け出せない。
そうこうしている内に部屋に着いてしまって、鍵を開けて中に入った。
すぐに目に入るのは、わざとらしくピッタリくっつけて敷かれた2組の布団。
ここまで来たら、逃げられない。
諦めを含んだ息を吐いて布団の上に座った。
その私の後ろに座る気配。
お腹に腕を回して引き寄せられる。
この体勢は、さっきの話の続きでもするつもりだろうか。
話自体、終わったものだと思っていた。
「…りら、あのさ。」
耳の近くで聞こえる声。
聞いているのを示すように小さく頷く。
「さっきの話、な。俺、知ってる事を黙ってたの謝って無かったなって。」
「…必要ない。」
「俺が謝りたいんだよ。ちゃんと最後まで聞けって。」
また泣かれたくは無いし、話を止めようと、あえて使った言葉。
それにすら、負けずに話を続ける秋紀の声に決意のようなものを感じた。
「りらと付き合う前から、ソレ、知ってた。知った瞬間は、さ。お前にも隙があったんじゃねぇか、って思ってた。」
続いていく話は、悪い方向に進んでいる気がする。
耳を塞ぎたいくらいだけど、秋紀の決意に応える為に黙って聞いていた。