第10章 墓参りはプチ旅行
‐木葉side‐
俺等が部屋を出る理由として、家族風呂を取ってくれたのは良かったんだが。
りらの性格がド真面目だった所為で、折角の広い風呂で2人きりだっつーのに…。
「ここで、何かシたら、軽蔑する。」
…と、入る直前で言われ。
ちょっと、いや、かなり期待してた俺にとっては拷問のような時間になった。
惚れた女が裸で目の前に居て。
更には、体の洗いっこだのして、そういう気分にならねぇ方が変だろ。
我慢に我慢を重ねた上に、風呂から出たら出たで…。
「妹の部屋、1人でとってたなら、2人で泊まるの違反だよ。」
なんて、これまた真面目発言をかまして、受付に話をしている。
まぁ、そんな真面目なトコも大好きだが。
なーんか、わざと時間を使ってる気がすんだよな。
俺が泣いたから、諦めてオッケーくれただけで、やっぱ触られたくないんだろうな。
方法は何であれ、自分の思い通りにさせるとか、アイツをオモチャにした奴等と同じになった気がして溜め息が出る。
落ち込み掛けた思考を、現実に戻すように音を立てたスマホ。
メッセージアプリの通知音。
りらは、まだ受付で話をしているから、暇潰しがてらそれを開いた。
【りらによく効く、魔法の言葉教えてやろうか?】
勿体振るように、それだけ送ってきたのは黒尾。
今のアイツを無理に抱くのは怖くて、藁にもすがる気持ちで返信する。
すぐに返ってきたのは、意外でも何でもない、だが、アイツが一番求めそうな言葉だった。