第10章 墓参りはプチ旅行
別室の鍵を貰ったはいいものの、どうやって秋紀と部屋から出れば良いのだろうか。
「りら。そういや、お前って部屋の風呂しか入った事ないんじゃね?」
「…はぁ、まぁ。」
黒尾さんの突然の声掛けに眉を寄せた。
考え事の最中に話し掛けないで頂きたいところだったけど。
「露天の家族風呂もあんだよ、ココ。センパイが後でりらと行くーっつってたが、この状態じゃ無理そうだろ?」
話の内容は、都合が良いもののような気がする。
その黒尾さんが、視線で示した先には、潰れかけたきとりちゃん。
「予約はしちまってるから、勿体ねぇし。木葉と行ってくれば?」
「行って、良いんですか。」
「君の酒に付き合い続ける程、僕達は強くないから、片付けて寝たいんだよね。早く行ってくれない?
あ、先に寝ちゃうから戻ってきて騒いだりして、起こさないでよね。」
黒尾さんだけではなく、月島くんまでも、私達を部屋から追い出しに掛かっている。
妹を部屋まで連れてきた理由は、これだったのだと分かって。
それなら、遠慮をする必要がない。
「秋紀、眠くない?」
「大丈夫、そんな飲んでねぇから。行くか?」
「…うん。」
今夜は2人とも戻らないと、行動で伝える為に、自分達の荷物を持って部屋から出た。