第10章 墓参りはプチ旅行
数分しても、外に出た筈の皆は戻らず。
不審に思って自ら扉を開けると、そこに寄り掛かっていただろうきとりちゃんと妹が倒れるようにして中に入ってきた。
「…だから、聞き耳なんざ立てるなと…。」
呆れたような黒尾さんの様子から、何故寄り掛かっていたのか分かり、定番の不機嫌笑顔で目の前に転がっている2人を見下ろす。
「…りら、怒んないで!アンタのその顔、マジで怖いから!別に喘ぎ声とか聞きたかった訳じゃないんだし!」
「そーだよ、姉ちゃん達がヤり始めちゃったら入り辛いから聞いてただけだし!」
「…なら、部屋から出なきゃ良かったでしょう。」
「「それは、スミマセンデシタ!」」
言い訳をする2人を威圧すると、すぐに謝罪が聞こえた。
まぁ、他の人も泊まる予定の部屋でイチャイチャしていた私も悪い。
許す事にして、秋紀の元へ戻った。
後に続いて、入ってきた面々とテーブルを囲み、雑談の時間が始まる。
売店で買ってきたらしい酒やつまみがあったから、さっきの宴会の二次会状態だ。
その中で、一番始めに潰れたのは、意外にも我が妹で。
「もう、私のお部屋戻りたくなーい。ここで寝るー。」
畳の上にだらしなく横になった。
同室で一晩過ごすのは嫌だから、起こそうと肩を揺する。
「…姉ちゃん、私が取ってた部屋に彼氏と泊まったら?」
私にだけ聞こえるように言った妹から鍵を渡された。
意識がはっきりしているようだから、酔っ払ったフリであるのに気付く。
「…有難う。」
このコなりに、私と秋紀の事を考えてやってくれたのだと思うと断れず、小さく礼を返した。