第10章 墓参りはプチ旅行
元々が泣き上戸な上に、私が絡むとやたらと弱くなる秋紀。
もう、涙腺が崩壊する寸前なのは声で感じ取れて、完全に泣かれたら、どうすれば良いか分からない。
「…りらに、俺が攻めないって、よく言われてるが。嫌がられるの、怖いから受け身に回ってんだよ。
ホントは、メチャクチャ触りてぇの。…りらの、全てを俺に頂戴?」
涙を耐えた掠れる声でも、秋紀の話は続いていて、言葉の通り私を求めるように、抱き締める力が強まった。
私は、汚い。
今でも、そう思ってる。
嫌だと言えなかった私にも非が無いとは、言えないから。
この考えが変わらない限り、私の一番汚い部分には、触れさせたくない。
だけど、そんな事があったのだと知っていても、他の皆のように私を汚くないと言ってくれるなら。
この人に、私の全てを捧げてしまいたいとも、思っている。
「…なぁ、どうしても、嫌?」
何も言葉を返せないでいると、最後の確認のような声が聞こえる。
それと同時に、シャツの肩に何かが落ちてきて、染み込んでいく感触。
完全に、泣かれてしまった。
こうなった秋紀を拒否するなんて、私に出来る筈がない。
「嫌じゃ…ない。」
欲しい言葉は貰えていないけど、秋紀にしてやれるのは求めに応じる事しかなかった。