第10章 墓参りはプチ旅行
部屋に戻ったら、秋紀は寝るものだと思っていたけど、寝室の方には行かず。
何故か、壁際に腰を下ろして胡座をかいた足を叩いている。
これは、秋紀が真剣な話を始める合図だ。
私の顔を見ていると、ちゃんと話せなくなってしまうのは、今でも変わっていない。
この場所で、真剣な話をするなら、きっと、あの事を知っていたって話。
もう、それについては話すのを諦めてしまっていたけど、機会をくれるなら丁度良い。
素直に従って、寄り掛かるようにして足の上に座った。
当たり前のように、お腹に腕が回って抱き締められる。
「あの、さ。お互いに、ごめんなさい、しねぇ?」
耳に近い場所から聞こえた言葉の意味が分からない。
別に喧嘩をしている訳ではない。
「俺は、知ってるのを黙ってた事、謝るから。」
私の、一から十まで説明されないと駄目、な部分は相変わらずだから、理由は話してくれるようだ。
口を閉じて話に耳を傾ける。
「りらは、自分の事を責めすぎて俺に触らせてくんねぇの、謝って?」
「…誰から、聞いたの。」
指示通り、謝る事は出来ない。
謝ったら、こんなに薄汚い私に触れて貰わなきゃいけなくなる。
だから、誤魔化すように話を逸らした。