第10章 墓参りはプチ旅行
秋紀と黒尾さんが戻ってきてから数分後、部屋の内線が音を立てる。
それに出ると、相手は女将さんで。
食事の用意に手間取っているから、時間を遅らせられないかと言われた。
私にとって、嫌な時間を先伸ばしに出来るのは都合が良くて、周りには聞かずに了承する。
事後承諾して貰おうと皆に伝えると、顔を見合わせて悪い笑顔になっていた。
それの意味は分からないけど、多分聞いて答える人達じゃないから余計な詮索はしない事にして、雑談で時間を潰す。
「そろそろ、時間だね。行こうか。」
小一時間程してから、きとりちゃんの声で皆で立ち上がり、食事処に向かった。
覚悟はしているけど、気が重くて足が前に進まない。
「…りら?どした?」
私を支えるように肩に腕を回して、秋紀が声を掛けてくれた。
でも、今はまだ言う時じゃないから首を振るしか出来ない。
「…大丈夫。俺は、傍に居るぞ。」
その言葉に、感じる違和感。
秋紀が離れてしまうと、不安を外に出したつもりはないのに、こんな事を言うのは…。
知っている、という事だ。
月島くんが、私を遠避けてきとりちゃんと話していたのは、その事だったのだと気付いた。