第10章 墓参りはプチ旅行
‐木葉side‐
女の後を追うように付いていく。
怒ってんだか、なんなんだか、機嫌が悪そうに見えたが、途中で表情が消えた。
黙って真顔でいると、他人にはりらとの見分けが付かないだろう。
その顔のまま、件の男を調理場から呼び出して。
女が宣言したのは、法的に訴えるとの事。
あの、封筒の中身は診断書らしいものが入っていて、それを見せ付けていた。
更には、りらが撮られていただろう動画まで持ち出し…。
「私が関わりそうな場所に、二度と現れなければ、これを表に出す事はしません。地方の山奥にでも引き込もって下さい。今すぐに消えて。
無断で逃げるのより、前科が付くのをお望みなら構いませんが。
…あぁ、それよりも奥様にこの動画を送りましょうか。」
至極、冷たい声で吐いていた。
男が、調理場には戻らず去っていくのを確認した後、診断書らしい紙をヒラっとさせて。
「なーんて。コレ、ケージくんが作ったニセモノなんだけどね。カルテとか、本人以外に渡してくれる訳ないじゃん。動画は、ホンモノだけど。」
豊かな表情を、悪戯っぽく笑わせていた。
結局、俺は何一つ役には立たず。
妹である、その女一人に解決させた事にイラついて眉を寄せる。
「コノハアキノリ、そんな顔しないで。アンタ達が、後ろに居たから出来た事だよ。
女が、男に立ち向かうにはリスクがあるの。力じゃ敵わないから。アイツ、私一人だったら、きっと殴り掛かるか、襲い掛かってきたと思うから。」
慰めるような事を言われても気は晴れず。
「トサカー…じゃなくて、テツローくん。コノハアキノリ、連れて戻りなよ。あんま、長く出てると姉ちゃんに怪しまれるよ。」
「おぅ。そうするわ。」
妹に指示された黒尾に、半ば連行されるように引き摺られて、部屋へと戻った。