第10章 墓参りはプチ旅行
‐木葉side‐
りらが、店の方を休む理由として墓参りついでに一泊って話をしてから、木兎や赤葦の様子が変だった。
俺と2人で旅行なんて、またケンカでもしたら、って余計な心配されてんのかと思ったが違って。
それが、判明したのは数日前。
赤葦から、俺が全て知ってると断定した電話があったから。
アイツの情報網コワいわ。
まぁ、それで、この旅館に勤める男が、りらと関係を持っていた事と、復讐計画を持ち掛けられた。
部屋を出て、すぐに向かった、とある客室。
ここに、赤葦が用意した秘密兵器とやらが居るそうで。
「調理場行くんじゃねぇの?」
「ここに来いって、赤葦に言われてんだよ。」
黒尾が不審がるのも無理はない。
俺だって、この状況で誰と会うか分からんのは不安だ。
そうは思っても、あの赤葦がりらにとって不利になるような事をするとは思わず。
扉をノックした。
「…はーい。」
聞こえてきた、女の声。
りらの、声によく似ている。
「…まさか、な。」
小さく呟かれた黒尾の声を拾って顔を見ると、引きつっていた。
そして、開かれた扉の中から現れたのは、りらによく似た顔の女。
「…やーっぱ、お前か。なんで、居んだよ。」
「うわ。トサカ男じゃん。なんで、アンタが来るのよ。」
「来たら悪いのかよ?」
嫌そうに溜め息しながら、女と黒尾が会話している。
どうやら、2人は知り合いのようだが、俺からしたら意味が分からなかった。
「私は、ケージくんに頼まれて、コノハアキノリって姉ちゃんの彼氏と行かなきゃなんないトコあるんだから、トサカの相手してるヒマないの。」
「つか、さっき木葉も言ってたが赤葦が一枚噛んでんのかよ。マジで犯罪スレスレの事やらかしそうで、怖いんだが。」
「あぁ、トサカもコノハアキノリと知り合いなの?…って、事はコレ?」
「コレ、だ。りらの彼氏のアキノリくん。」
話が終わるまで待とうと思ったが、途中で俺に視線が向く。
挨拶すりゃ良いのかすら、分からん状態で居ると、取り合えず中に入るように促された。