第10章 墓参りはプチ旅行
秋紀が知っていた事も、私の為に動いている事も、全く知らない私達は、ゆっくりと風呂に入っている。
「りら、アンタの胸…。」
「また触りたいの。」
「違う。そんな、自分のモン主張されまくった胸触れるか!」
「気になる?」
「気になるに決まってるでしょ。キスマーク付けられ過ぎ!薄着の季節になるんだから控えて貰いなさい。」
その中での会話は、私の体に残された秋紀の痕の事で。
私は気にしていなかったけど、見る方はそんなに気になるのだと知った。
そんな事を言っていたくせに、身体洗ってあげる、だの理由を付けて私に触りまくったきとりちゃんは、かなりのエロ親父である。
まぁ、ふざけた事をしていた方が気持ちも暗い方に向かなくて良い訳で。
それなりに、すっきりとして風呂から上がった。
風呂上がりだけど、後で食事に行くから、浴衣じゃなくて洋服を着て部屋へと戻る。
「あれ?クロと木葉クンは?」
月島くんしか居ない状況に、首を傾げているきとりちゃん。
「きとりさん、ちょっと…。」
それに反応したように、月島くんが手招きして、2人で近付いていく。
「りら、君は呼んでないよ。少しあっち行ってくれない?」
「ツッキー、りらをそんな扱いしないで。」
「…いいよ。きとりちゃんに用事なら、あっち行ってる。」
手で、私だけ追い払うような仕草をした月島くんをきとりちゃんが怒ったけど。
この旅館に来て私に聞かれたくない話なら、流石に予想出来る。
寝室用に襖で区切られた部屋の方へと1人で籠った。