第10章 墓参りはプチ旅行
‐黒尾side‐
センパイが、上手くりらを止めてくれりゃ良いんだが。
りらが、苦しんだ時の保険として俺等を連れてきたって事は、止める気ねぇな、アレは。
まぁ、俺等もアイツが決めた事を簡単に止める女じゃねぇのは重々承知してる訳で。
意外に頑固だからな、りらって女は。
2人が入っていった風呂場の方を眺めていると、立ち上がる気配。
そっちに目を向けると木葉が出ていこうとしていた。
「ちょい、用事あっから出てくるわ。」
こっちに声を掛ける為に振り返った木葉の顔は、若干恐ろしく感じる。
いつも通りヘラヘラ笑って見えるが、目が笑えてねぇ。
もしかして、コイツ…。
「お前、知ってんの?」
「…知ってる。つか、りらと再会する前から知ってた。」
内容を言わなくても、りらに関わる事を言ったと分かってる。
それは、口先だけの嘘じゃねぇ事を表していた。
その上で、今動こうとするなら、用事は相手の男に会う事だろう。
「俺も行くわ。もし、お前が何かしたらりらが泣くからな。」
「りらを泣かせるような事はしねぇよ。ちょーっと、忠告するだけ。」
「自分の為に大好きな彼氏が犯罪者になったら、泣くだろ。」
本当に忠告を兼ねて話をするだけならいいが、今の表情を見ていると手まで出しそうだ。
それは止めねぇと、りらは自分の所為だと思い込んで苦しむ。
付き添う意思を示して立ち上がった。
「だから、犯罪並みの事する気ねぇって。でも、まぁ…サンキュ。」
「お前じゃなくて、りらの為に決まってんだろ?…月島、留守番ヨロシクな。センパイ達が出てきたら、俺等は買い物とかって誤魔化しといてくんね?」
木葉の横に並んで室内を振り返る。
興味無さそうにスマホいじってるフリだけしてた月島が頷いたのを確認してから部屋から出た。