第10章 墓参りはプチ旅行
「…大丈夫だよ。」
脱衣場で、服を脱ぎながらきとりちゃんに掛けられた一言。
意味が分からなくて首を傾げた。
「クロ達だって、出会って間も無いアンタの過去を受け入れてくれた。今でもアンタの事、大切にしてくれてる。
他の男が出来る事を、彼氏が出来なくてどうすんの?しかも、アンタに惚れ込んで何年よ、あの男。」
やっぱり、私が何を思ってこの旅館に来たのか分かっていた。
それなら、止めそうなものだと思ったけど。
「もし、万が一でも、木葉クンがアンタを捨てても、私達は責めない。責められない。アンタが、背負ってるものは、そのレベルで重い。
だけど、アンタには私達が居るよ。今なら、傷付いても抱き締めてやれる腕が、ここにも、他にもある。
だから、ちゃんと知って欲しいと思って、伝えるなら今日にしなさい。」
私が、今日言わなくても、いつか伝えてしまうだろうと予想して、止めないようだ。
私の事を、よく分かってくれている。
背中を押してくれる人達が居るから、私は変われて、今がある。
怖くても、大丈夫。
言いたい事を、伝えたい事を、ちゃんと言葉にする。
それで、何かあっても私を支えてくれる仲間が居るんだ。
だから、決めてきた通り、今日。
秋紀に、私の全てを知って貰おうと思った。