第10章 墓参りはプチ旅行
きとりちゃん達が話を終えて戻ってくる。
思った通り、内容はあの旅館に泊まる事だったようで、何も言わずとも黒尾さん達が付いてきた。
きとりちゃんが帰ってきた昨晩の内に、1名追加の連絡はしているけど、更に2名追加って大丈夫なんだろうか。
そんな心配は無用だったようだ。
お出迎えにきた女将さんがきとりちゃんを見て、先程は、なんて挨拶をしていたから連絡はしていたらしい。
予約していた部屋は、以前に来た時と同じ、露天風呂が付いた部屋。
ちょっと、お値段的には高かったけど、最初は秋紀と2人きりの小旅行になる予定だったし。
もしかしたら、秋紀と居るのは最後になるかもしれない時間を、いい場所で過ごしたかった。
この旅館に来るまで、秋紀は私を大切にしてくれているから、大丈夫だと安心していたけど。
やっぱり、あんな話をしたら引かれると、嫌われると、思ってしまって。
私がやろうとしている事を知らない秋紀は、単純に喜んでくれてたから、暗い話に持ち込むのは今でも心苦しい。
考えただけで、自分の方が気落ちしてきた。
「…ね、りら、ご飯の前に一緒にお風呂入ろっか。」
落ち込んだ私の気持ちを汲んだのか、さっき言っていた女同士の話をしたいのか。
そのどちらかは分からないけど、秋紀の顔を見ている事が辛くなってきたから頷いた。
「木葉クン、りら借りるよー。」
「ちゃんと返して下さいね。俺のなんで。」
「分かってるって。」
気軽な感じでされる会話が、私の中では重い。
話をした後も、俺の、だと言ってくれるか分からないから、怖くて逃げるように風呂の方に行った。