第10章 墓参りはプチ旅行
人をからかう癖のある月島くんとまともに会話をしようとした私が間違いだ。
多分、このまま言い合いをする事をお望みなのは分かっているけど、秋紀が変な所で嫉妬するから止めておく。
そのつもりで、話していた人から顔を逸らしたけど。
「…ちょっと。僕と話してるんじゃないの?」
「話、終わった。」
「君、僕がこっちに来た理由を知りたいんじゃないの?」
「月島くん。答えるつもりあるの。」
「ないよ。」
「なら、無意味。」
結局、突っ掛かられて言い合いをしてしまった。
私が、こんな風に話せる相手は少なくて。
気を許している証拠だから、あまり秋紀に見られたくはない。
不機嫌になられたら困る。
伺うように秋紀の顔を見ると、機嫌が悪そうと言うよりは心配そうに私を見ていた。
「大丈夫。いつもの事。喧嘩しないよ。」
「…そ?りらが、そうやってポンポン言い返すの珍しいだろ。よっぽど、腹が立ってんのかと。」
「月島くん相手だから。」
安心させようとしたけど、会話の中に不機嫌にさせる要素があったようで、眉を少し動かしたのが見える。
どこが悪かったか理解出来ていないから、フォローが思い浮かばないでいると、抱き締められた。
「りらの特別は、俺だけで良いんだよ。」
言われた言葉で、嫉妬したのだと理解する。
この程度で妬くなんて、本当に可愛い人だと、心底思った。