第10章 墓参りはプチ旅行
特徴を聞いただけで、分かってはいた。
でも、こっちに来ている事すら知らなかったから、顔を見ても現実ではないような気がして。
つい、本物かを確かめようと体を触る。
「…ちょっと。久し振りに会って、いきなりセクハラしないでクダサーイ。」
私を止めるように握った手には、ちゃんと体温が伝わってきた。
「本物。」
「何?僕の偽物でもいると思ったワケ?」
相変わらずの、人を小馬鹿にしたような笑顔が懐かしい。
久し振りの挨拶すら、していないけど、会話が成り立っていたから、そこは気にせず首を振って否定した。
「思ってない。」
「じゃ、確認なんて無意味デショ。」
「でも、本人が居ると思わない。」
「僕だって休みがあれば出掛けるし、縁があった人の墓参りくらいするよ。」
引きこもりじゃないの、知ってるから聞きたいのは、そんな答えじゃない。
わざと、やってるのが分かってるから、素直に何でこちらに来たのか聞くのは癪に触る。
「ここ、宮城から遠い。」
「知ってる。」
「いつ、来たの。」
「昨日の夜。」
場所の事とか突っ込んではみるものの、私の聞く事に回答するだけで。
「…何で、来たの。」
仕方無く諦めて、一番知りたかった事を渋々問い掛ける。
「新幹線に決まってるデショ。」
それでも、理由を言わずに誤魔化されて、流石に腹が立った。