第10章 墓参りはプチ旅行
掃除は、する必要がないくらい綺麗にされていたから、お線香を置いて手を合わせる。
それを終えて、隣を見ると秋紀はまだ合掌していた。
少しして、目を開けた秋紀がこちらを向く。
どこか、照れ臭そうな顔をしていた。
「何か、お話してたんですか。」
「ん?りらの彼氏ですー…って。」
それくらいの割に長かった気がするけど聞く前に、きとりちゃんが戻ってきたから、お墓の前を開けた。
きとりちゃんは、話したい事が沢山あるだろうから邪魔をしないよう、その場から離れ、お寺の門の前で待つ事にする。
「あの、さっき。」
「…ん?」
「彼氏ですって名乗っただけの割に、長かったかな、と。」
黙ったまま立っているのも、暇をさせてしまう気がして話し掛ける。
その途端に、口元を押さえた。
「照れてる。」
「…照れてねーよ。」
言葉より、顔は正直のようだ。
耳まで赤くして、私から視線を逸らした。
「…りらを。」
「私を?」
「幸せにしますって…。」
物凄く小さな声で、嬉しい事を言われたけど相手が違う。
それを宣言するなら、私の両親相手にである。
突っ込んだら、照れに恥ずかしさまでプラスされて、何も喋らなくなってしまいそうだったから、止めておいた。