第10章 墓参りはプチ旅行
一緒に話を聞いていたきとりちゃんが、誰かに電話を掛けている。
今の言葉を聞いた直後に掛けるなら、月島くんだろうと思ったけど。
「…あ、クロ?今、大丈夫?」
違った。
多分、月島くんは木兎さんと2人で行動なんかしない。
だから、一緒に居るであろう人は黒尾さんで確定だけど、何故そっち。
あぁ、きとりちゃんが掛けやすいからか。
「もしかしてツッキーと一緒に居たり、しない?」
この電話が終わる頃には、疑問は全て解決するだろう。
黙って、通話をする姿を眺めていた。
「…おい、りら。手!」
「…手。」
会話の内容を聞こうと、そちらに集中していた時、反対方向から声が聞こえる。
言われた場所を見るように、視線を落とした。
「…あぁ。」
「あぁ…じゃねぇ!火傷すんだろ!」
「まだしてない。」
「してなくても、予防しろ!」
私の手の中には、お線香。
束のまま、点けられた火が握っていた部分に近付いている。
火傷くらい、よくしているから気にせず、端を持ち直した。
それを持ったまま、通話の終了を待っていたら、お線香が燃え尽きる。
きとりちゃんには、視線でお墓の方を示して先に戻る事にした。