第10章 墓参りはプチ旅行
翌日、朝早くから行動を始めて、お墓に辿り着いた時、きとりちゃんと2人で首を傾げる。
まだ、火を点けたばかりのお線香が残っていた。
お墓周りも、掃除したばかりなのか綺麗で、所々に水の跡が残っている。
「誰が来たと思う?」
「知らない。」
「え?親戚とかじゃねぇの?命日に合わせて墓参りすんのって、そんくらいだろ?」
確かに、親族が来ていたなら、話は分かるけど。
私の家族は、別の日に来ると話していたし。
他の親族は、ちょっと遠方に住んでいるから、平日にわざわざ休みを取ってまでは来ないと思う。
それを知らない秋紀に説明して、3人で考え込んだ。
そんな事をしても、答えなんか出る訳がなくて。
早々に思考する事を諦め、お線香を貰いに住職の元へと行く。
「先程、以前に一緒にいらしていた若い男性達もお見えになりましたよ。」
そこで聞いた、こんな話。
私と一緒に来た事がある若い男性といえば、元同居人の面々だ。
平日に、休みが取りやすそうなのはホテル業界の黒尾さんだろうか。
でも、男性達、は複数を表しているから1人じゃない筈。
「どんな方でしたか。」
「背の高い…。」
それでは、ノーヒントと変わらない。
話には、まだ続きがありそうだから黙って聞いておく。
「髪を、こう立てた方と…。」
住職さんが、手振りで髪を逆立てるような仕草をした。
髪を立てるようなセットしているのは、木兎さんと黒尾さん。
2人で来たなら、木兎さんと赤葦さんか。
「…眼鏡を掛けた、金髪の方でしたよ。」
自分の中で解決しようとした疑問が、全て飛んでいくような言葉が聞こえる。
今の特徴に当てはまるのは1人しか思い付かない。
だけど、他の誰よりも有り得ない人だった。