第10章 墓参りはプチ旅行
ここは、きとりちゃんの家だ。
家主である彼女を、邪魔扱いする訳がない。
まぁ、入ってきた途端に下品な事を言ったり、秋紀をからかい始めたのには呆れたけど。
すぐに止めなかった私にも非はある。
とにかく、秋紀で遊ぶのは止めたようだから、着席を促すように隣の椅子を引いた。
「…で?」
座る姿を眺めながら、疑問を表す一音を送る。
「…ごめん、流石にその一文字だけ言われても意味分からない。何が、で?なのよ。」
考えるような間を空けてはいたけど、分からなかったらしく、眉を寄せて返された。
「何しに帰ってきたの。」
確かに、あれだけで分かったら逆に気持ち悪い。
質問の内容を告げると、カレンダーの方を見ていた。
今月のカレンダー。
明日の日付には、丸を付けてある。
この家の、持ち主だったきとりちゃんの両親の命日だ。
それで、理由は分かった。
丁度、私達もそれについて話をしていたところで、きとりちゃんが帰ってきたのだ。
「りら、明日は休み?」
「うん。だから、秋紀と行こうって話、してた。」
「あら、木葉クンも来てくれるの?」
「…まぁ、完全に住んでる訳じゃないとはいえ、俺もこの家に上がり込んでるんで。」
「うちの親、りらの事可愛がってたから、彼氏連れてったら喜ぶよ。私も、ご一緒していい?」
言葉として、はっきりと内容を言わなくても、同じ目的だと分かっている。
それなら、断る意味もないから頷きを答えにした。