第9章 名前を呼んで
悪口を言う私を、一度は嫌がって止めたのに。
それでも、私と普通に話をする事が大事なんだろうか。
確かに、嫌いで言う訳じゃないけど、言われてて気持ちの良い言葉じゃないだろ。
嫌がって拒否されると思っていたのに、許可をされてしまうと、戸惑ってしまう。
何を言えば良いか分からず黙り込んだ私を抱き締める力が強くなって。
「…っつー訳で。これからは、対等に話せよ。俺は目上の人間じゃねぇの。りらの彼氏、だぞ。
…な、俺の名前、呼んで?」
耳元で、低く囁かれた。
「あ、…あき、のり。」
呼び慣れなくて、声が上擦る。
横目で見える顔が笑っていた。
「もっと呼んで。りら…。」
「…秋紀。」
「りら。」
わざとらしく、私の名前を呼び返す声。
ただ、名前だけを繰り返し呼び合っているだけなのに、とても幸せな事に感じる。
そんな事をしている内に、身体の奥底から沸き上がってくる、熱い何か。
私の、発情スイッチが入ってしまった。
「…秋紀、シたい。」
「りら、ホント、ソレ好きな。」
腰を一撫でして求めてみると、体が離されて。
でも笑ったままだから、拒否じゃないのが分かる。
「りらの部屋、行こっか。」
肩を抱かれて、私の部屋へ。
何度も繋げた身体なのに、しつこいくらい名前を呼ばれながらの行為は、はっきりと自分と相手を認識出来て。
今までにない、快楽を得る事が出来た。