第9章 名前を呼んで
だから、お断りした筈なんだけど。
強引さを標準装備している木兎さんが、それで引いてくれる訳もなく。
お店の営業は終了して、いつもの居酒屋へ。
「…で、何があったんだよ?」
乾杯をしてからすぐに、その話を始める。
心配を掛けたら悪いから、相談をするつもりは無くて何もない風を装った。
でも、それも効果は無かったようで。
「りらちゃん。…木葉関連でしょ?」
「…だな。木葉以外の事で、こんな機嫌悪くしねーもん。」
あっさりと、確信に触れられた。
「なんで、分かるんですか。」
肯定はする。
内容は言わない。
そんなに、私は分かりやすいんだろうか。
その疑問の解決が先だった。
「りらちゃん、嫌なお客さんに絡まれた時とかも機嫌悪くて笑うけど、そんなに根に持たないし。」
「ここ最近、ずっと同じ顔で笑ってるからな。ケーゾクして悩んでるなら、木葉カンケーだろ?」
目の前のお2人の息ピッタリ具合が、今の落ち込んでいる私には痛くて涙が溢れる。
「えっ、え?ちょっ!りらちゃん、泣くなよー。」
「光太郎も私も、責めてる訳じゃないんだから、泣き止んで?」
然り気無く、名前呼びをしているかおるさんの声が更に胸に突き刺さって、迷惑は掛けたくないのに、涙は止まらなかった。