第8章 仲直りの仕方
‐木葉side‐
女を夜中まで部屋に連れ込んでたの、妬いてくんねぇとか。
そこまで、俺を好きじゃ無かったんじゃねぇかな、とか思ったり。
凄ェ、カッコ悪ィの分かってるが。
酒が抜けきってねぇ状態で、そんな事を考えたら涙も出るっつーの。
止まらない涙を疎ましく思っていると、頬に触れる暖かい感触。
熊野の指先が、目元を軽く擦って離れていった。
それを追うように顔を上げると、相変わらずの無表情でテーブルの上を眺めている。
その、視線の先にはテーブル用の布巾。
「…すみません。ハンカチ持ってなかったので。ダスターよりは、マシかと。」
「流石に、ソレで拭かれたらキレるぞ。…んで、もっと泣くぞ。」
辛気くさい空気が、一気にギャグ路線にいくのは、コイツの天然さがなせる技。
言葉とは裏腹に涙は止まった。
「…木葉さん。帰らなくていいなら、少しお話して良いですか。」
だが、すぐに戻ってくる緊張感。
コイツが、自分から話したいなんて珍しい。
多分、ちゃんと決めてきた事があるからだろうな。
別れるって決めてきているなら、引き止める自信は無くて。
止まった筈の涙が、また溢れそうになっている。
泣いたら、コイツが言えなくなるだろうから、耐えるように唇を噛んで頷いた。