第8章 仲直りの仕方
それに女性の事より、気になるのは寧ろ飲み散らかした部屋である。
前に訪れたのは旅行の前日で。
まだ、2日くらいなのに、よくここまで散らかせるものだ。
溜め息を吐いて片付けを開始した。
だけど、すぐに手を掴まれて止められる。
「…お前、何しに来たの?」
声が低くて、また怒っているような気がした。
顔は俯いていて、どんな表情をしているか分からなくて。
私が来たのが、不都合だったとしか思えない。
仲直り、出来る訳がない。
「…ごめんなさい。帰ります。」
離して貰おうと手を引くと、逆に力が強くなった。
帰さない意思を伝えようとしてくれているのは分かるけど、少しばかり痛い。
「…木葉さん、痛いです。」
「だって…離したら、お前、帰るだろ?帰したくねぇよ…。」
木葉さんの声は鼻声だった。
掴まれている手に、雫が落ちてきて、泣いているのが分かる。
怒りすぎると涙が出る人もいるけど、木葉さんもその類いだろうか。
そこまで、怒っている相手を引き止めようとする意味が分からない。
「…何で、ですか。」
ちゃんと別れ話をしたいとか、そういう理由であってもいい。
真意が分からなければ、どう対応すれば良いのかも分からないから、答えて欲しい。
それなのに、木葉さんは黙ったままだった。