第8章 仲直りの仕方
昨日のあれだけで、別れたつもりにはなってなかったけど、木葉さんの方はそのつもりだったかな。
親しげに名前を呼ぶ女性が、こんな時間に部屋から出てくるなんて、それしか考えられない。
修羅場とか、木葉さんが辛いだろうからしたくない。
だから、逃げようとは、した。
だけど、女の人に腕を捕まれて出来なかった。
「…あ、私、アキちゃんとは何もないから!安心して!…ほら、会いに来たんでしょ?入って入って!」
疑いの言葉を掛けた訳でもないのに、早口で弁解をして私を部屋の中に押し込む女。
「じゃ、ごゆっくりー。」
軽く手を振って、帰っていってしまった。
玄関で、木葉さんと2人。
自分から声を掛けた方が良いかも分からず立ち尽くす。
「…熊野、取り合えず上がれよ。」
ようやく喋ってはくれたけど、私の顔はチラりと見ただけで、木葉さんは奥の部屋へと引っ込んだ。
入っていい許可はしてくれたから、靴を脱いで後を追う。
部屋の中は、飲み散らかした形跡はあっても、ベッドの乱れは無くて。
一瞬でも疑おうとした自分を恥じた。
やっぱり、木葉さんを信用していたい。
疑ったり、怒ったり。
そんな事をして、ただでさえ険悪な今の状況を悪化させても仕方がないから、さっきの女性との関係は聞かないと決めた。