第8章 仲直りの仕方
赤葦さんの言った方法が、本当に仲直り出来るやり方なのかは分からない。
それでも、可能性があるのなら試してみたくて。
少しでも早く木葉さんと話がしたくて。
「かおるさん。すみません、私、帰ります。ご馳走さまでした。」
飲み物だけを片付けて席を立った。
「…あ、うん。気を付けてね。お疲れ様でした。」
「はい、お疲れ様です。お休みなさい。」
「明日も宜しくね。お休み。」
いつものような、だらだらとした謙遜しあいのやり取りもせず、居酒屋から出る。
向かう先は、勿論自宅じゃなく、木葉さんのマンションだ。
そんなに遠くない、その場所にはすぐに辿り着いた。
部屋の前、いつも通り鍵を開けて中に入るのは簡単な筈なのに何故か出来ない。
許して貰えなかったら。
別れたいと言われたら。
それが怖くて、鍵を持った手が震えていた。
悩む事、数分。
意を決して、鍵穴に手を近付けた時に扉が音を立てる。
内側から、鍵を開けたか、閉めたか。
どちらかの、金属がぶつかるような音。
そして、その扉が開いて。
「じゃあね。アキちゃん。お休みー。」
中から、女の人が出てきた。