第8章 仲直りの仕方
‐赤葦side‐
りらは、嫉妬という感情を知らない訳じゃない。
俺達の家族のような関係を邪魔されるのを嫌がって妬いていた事もある。
なのに、何故。
りらにとって、誰よりも大切な筈の木葉さんが他の女性とそういう話をしても怒らないと断言出来るんだろうか。
想像力が欠けていて、考えてみただけでは、怒る理由が思い浮かばないんだろうか。
「何で、怒らないの?」
りらは、自分から話をするのが苦手で。
待っていても、理由を説明しないだろうから質問をする。
問い掛けには、ちゃんと反応してくれるから。
「…木葉さんを、信じてます。」
顔を上げたりらの眼が、俺をしっかりと見ていた。
それだけで、意思の強さを感じ取るには充分。
実を言うと、このまま別れてしまえばいい、は本心で。
怒らないなら、そんなに木葉さんを好きじゃない、だとか言ってやろうと思っていたけど。
考えていただけ無駄だった。
勝ち目がない。
りらにとって憧れの先輩だった、記憶の中で美化された木葉さんでなくても、俺は勝てない。
「りら、木葉さんに今の話をしたら仲直り出来るよ。りらは信じてるから、同じ事をされても怒らない。だから、木葉さんが怒ってる理由が分からないって。
その上で、昨日の雰囲気を壊した事だけ謝ればいい。木兎さんと間違いを起こしそうだった事は、謝る必要がない。りらは、悪い事してないから。」
完全な敗けを認めるのは悔しくて、余計な事を吹き込む。
りらを信じきれなかった自分の器の小ささを自覚して、落ち込んでしまえばいいと思った。