第8章 仲直りの仕方
だって、私は嘘を吐いたり騙したりした訳じゃない。
木兎さんに求められたら、応じてしまったかも知れないから、答えられなかっただけ。
でも、何もしていない。
キスしたとか、ホテルまで行ったとか、黒に限りなく近いグレーなら、怒る理由もなんとなく分かるけど。
未遂ですらないのに、怒る理由があるのか。
「…りら、何を考えているの?」
考え込んでいる仕草でもしただろうか。
聞こえてきた声に反応して顔を向ける。
「木葉さんが怒った理由が分からないと、解決出来ないので。」
「それを考えてた?本当に、分かってない?」
「はい。」
分からないから、教えてくれ。
その意味を込めて頷いた。
「…りらちゃんは、木葉が他の女と、そういう話をしても怒らないの?」
答えのようで、答えじゃない声の主はかおるさんで。
何で分からないんだ、と言いたげな顔をしている。
「怒りません。」
質問に答える事が、理由を教えてくれるのに繋がるなら、素直に答えた方が良い。
思っていたまま言葉にすると、不思議そうな顔をされた。
嫉妬とは、不安からくる感情だと聞いた事がある。
私は、木葉さんを信じているから、嫉妬する理由がない。
裏切らない保証は無くても、私が信じていたい。
これも、私の独特な考え方なんだろうか。
何と説明すれば良いか分からなくて、下を向いた。