第1章 再会の裏話
‐赤葦side‐
木兎さんが、何をしようとしているのか、すぐに分かった。
それは、俺も考えた事があったから。
りらの幸せは、きっと木葉さんがいる事で成り立つ。
2人を再会させる‘きっかけ’になれば、それは間接的であれど、りらを幸せにする事だ。
分かってはいても、行動は出来なかった俺。
思い付いたら、即行動する木兎さん。
本当に、尊敬出来る先輩だ。
俺は、自分をいつか選ぶんじゃないか、なんて薄い望みに賭けていた。
家族である俺達を、恋人にはしないと分かっていたのに。
「木兎、止めなくて良かったの?赤葦も、りらちゃんの事…。」
「気付いてましたか?」
「赤葦、無表情だけどりらちゃんが絡むと分かりやすいから。」
「よく、言われます。」
暗く堕ちていきそうだった頭を正常に戻すような声が聞こえる。
木兎さんを止めないのは、俺の中で正しい判断。
それを正しいと思えるのは、俺自身がりらの幸せを何より望んでいるから。
木兎さんが、木葉さんを説得出来るとは到底思えない。
多分、撃沈して戻ってくるだろう。
そうしたら、次は俺も行きます、と言おう。
2人の再会に手を貸す。
協力する事で、諦められない気持ちに区切りを付けたい。
そうしないと、俺はいつかりらを傷付けてしまう。
無理矢理にでも、自分のものにしようとしてしまう。
「好きだから、俺はりらの幸せを願います。木兎さんだけでは、無理そうなので俺も協力するつもりですよ。」
また、思考が後ろ暗く堕ちる前に宣言する。
人に言ってしまえば、後には引けない。
そうやって、会話をしている内に木兎さんが予想通り撃沈して戻ってきて。
気持ちが変わらない内に、それこそ明日にでも。
一緒に説得をしにいく話をした。