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【HQ】繋がる縁の円

第8章 仲直りの仕方


‐木葉side‐

熊野が、落ち込んでるのは分かる。
俺と険悪だから落ち込んでんのか、皆の輪に入れなくて落ち込んでんのか。
どっちかは、分からない。

本来なら、ここで俺が話し掛けりゃ解決すんだろうが、さっき冷たく当たったばっかで。
軽い調子で話し掛けんのは、何か違ェだろ。
逆に重苦しく話し掛けてケンカになったら、この場の雰囲気壊しそうで出来ねぇし。

つか、何でコイツ等、熊野を独りにしてんだよ。
普段は、マジで邪魔なくれぇ熊野を構い倒すクセに。

「木葉さん、りら、奪いますよ?」

チラチラと熊野の様子を伺っていると、背筋が凍るような赤葦の声が聞こえた。

「気付いてないんですか?わざと弱らせて、慰める役を差し上げてるのに。」

続いている声。
分かったのは、俺達が仲直りする為に熊野を独りにしたって事。

有難いより、腹が立った。

熊野が、昔受けてたイジメってやつは、無視から始まり、暴力に移り変わった。
それを、思い出させるような真似しやがって。

雰囲気悪くなろーが、もういーわ。

吹っ切れると、気持ちが軽くなって。
キレてやろうと立ち上がろうとした時、俺より先に立ち上がった熊野。

「すみません。明日、用事があるので、タクシーか何かで帰ります。お休みなさい。」

誰にも、口を挟ませないような早口でそれだけ言って。
満面の笑顔を浮かべた熊野が出ていった。

追い掛ける勇気は、残念ながらない。

熊野は、きっと俺を信じてくれないから。

木兎に、追い掛けないのが正解、だと。
傷付くのが嫌だから信じない、と。

多分、自分が同じ目に遭った時の事を想像して言ってた。
ちょっと状況は違うが、今の俺が何を言っても、ご機嫌取りの軽い言葉にしか聞こえないだろう。

聞く気になるまで待ってやるのが、今の俺が出来る事だと本気で思っていた。
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