第8章 仲直りの仕方
仲直りしたくない訳じゃない。
でも、ただ謝るだけでは違う気がして。
数時間振りに話が出来る状態なのに、木葉さんの前に立つと声が出なかった。
木葉さんも、私を見てくれてはいるけど、口は開いてくれない。
「あーっ!腹減ったーっ!飯行こーぜー!」
気まずい空気を吹き飛ばすような木兎さんの声が聞こえて、一先ず移動する。
大会の終了時間に合わせて営業時間を伸ばしているらしい居酒屋が沢山あったけど。
先頭を歩いていた黒尾さんに誘導されて着いた先は、どう見てもただの駐車場。
一台のミニバンに近付くと、キーを差し込んでいる。
黒尾さん車持ってたんだな、とか思ったけど、わナンバーだからレンタカーのようだ。
わざわざ、こんなものまで用意したのか。
今回の木兎さん告白作戦にいくらのお金が掛かったか気になって仕方がない。
状況が掴めていないのは私だけじゃなく。
木兎さんや、かおるさんもポカンとしていた。
「あの大会が目的だったので、ホテルの招待だとか嘘なんです。勿論、木兎さんが黒尾さん経由で取った筈の予約も。
チェックインとかの時間の都合上、ね。」
赤葦さんの説明で、一応は納得する。
だから、車で東京に戻ると言いたいんだろう。
まだ電車ある時間なんだから、こんな無駄遣いしなくて良いのに。
呆れを多分に含んだ息を吐き出して、車に乗り込んだ。