第39章 新たなる戦い
わざと丁寧に答える。
『それ、三成みたいだから やめて。あいつが二人いるとか考えらんない。』
ブツブツ言っている家康と肩を並べて歩き出す。
『ねぇ、なんで顔に手形ついてるの?』
家康に尋ねられ、かくかくしかじかで、と説明すると呆れられた。
『あんたは そんなに気合入れなくていいから。空回りしそう。
信長さまの側にいれば大丈夫でしょ。それに、俺たちもいるんだし。』
言い方は冷めてるけど、家康って やっぱり優しい。
『うん、頼りにしてる。でも、いつも助けて貰うだけじゃなくて自分で出来ることは やりたいんだ。』
横を向き笑顔を返す。
『…解った。あきら之丞って、弱そうなのに頑固なんだね。そういうとこ嫌いじゃない。』
最後の方は消え入りそうな声で家康が言った。
『ありがとう。』
二人が城の門を出ると、広場には多くの兵が隊列を組んで控えていた。
そういえば今回も光秀は城に残るらしい。
一人残して行くということは信頼の証だろう。
暫くして信長が やって来る。
『よし、揃ったな。これから上杉・武田軍との戦いに向かう。』
そう言うと一瞬にして広場が静まり返る。
『みな決して命を無駄にするな。勝って必ず城に戻る。行くぞ!』
おーーー!!!
広場が歓声で揺れているようだ。
信長の声を合図に、少しずつ隊列が進軍していく。
あきらは その真ん中辺りを愛馬:紅に跨り進んで行く。
『へぇー、なかなか似合ってるじゃないか。』
後ろから秀吉が声を掛ける。
『あ、秀吉さん。私やっと まともなとこを見せられましたね。』
あきらが言うと秀吉がクククッと笑う。
絶対何か思い出してるよね。…でも、どれを!?
『あぁ、立派な姿だ。』
あきらの背中をポンと叩くと、
『俺は信長さまの側にいる。何かあったら来い。無くても来ていいからな。』
と言い残し、前方へ消えて行った。
一行は のんびりと田園の中を進む。
なんだか意外。
『あきら之丞さま、お疲れになっていませんか?。』
今度は三成が横に並び、いつものように気遣ってくれる。
『大丈夫、ありがとう。それにしても、のんびり進むんだね。』
今 感じた疑問を三成にぶつける。
『ええ、兵の足を温存する為です。戦場に着いて、疲れたとは言っていられませんから。」