第36章 約束☆幸村
パクリと一口食べて、幸村が目を丸くした。
『う…っめぇー!』
『良かった。』
あきらがホッと息を吐く。
その後もパクパクと美味しそうに餅を頬張る幸村を、微笑みながら見つめる。
『ぶっ、幸村、口のとこ海苔着いてる。』
なんか可愛いな。
『ん?何処だ?』
と言いながら舌で探る。が、なかなか取れないらしい。
『あはは、違うよ、ここ!』
あきらが親指で そっと幸村の口元をなぞる。
その指先が唇に触れた時、ガシッと手首を掴まれた。
『ゆ、幸村?』
幸村の大きな瞳が 真っ直ぐにあきらの目を射抜く。
『お前に怖い思いさせる奴がいたら、俺が思い知らせてやる。
お前を傷つける奴がいたら、俺がやっつけてやる。
お前は俺が 必ず守る。』
『なんで急にそんな事…って言うか私は仮にも敵なんだよ?』
戸惑い尋ねると、
『敵だろうが味方だろうが関係無い。』
はっきりとした声音で幸村が答えた。
『お前は俺にとって大切な…大切…な?』
そこまで言うと、「ん?」と複雑な顔をする。
『大切な…友達だからよー。』
『友…達。』
あー、そうだよね。
あれ?喜ぶとこなのに、なんで ちょっと がっかりしてるんだろう。
そんな気持ちを隠して、幸村に礼を言う。
『ありがとう、幸村。私は、幸村と友達になれて本当に良かったと思ってる。これから…戦が始まっても、ずっと友達でいてくれるかな?』
『あったり前だろ。お前が嫌だって言っても離れねーからな。』
『うーん、それはちょっと迷惑。』
あはは、と二人で笑いあう。
『あ!私、他にも用があったんだ。また遊びに来るよ、じゃ。』
あきらは笑顔で幸村の露店を去った。
『友達で収まんのかなぁー。』
天を仰ぎ幸村が呟く。
『すみせーん、これ見たいんですけど。』
『はい、いらっしゃい!』
そして何事も無かったように商いに戻るのだった。