第35章 お見舞い…☆光秀
ざわざわとした広間の喧騒が懐かしい。
ほんの一週間、自分の部屋で食事を摂っていただけなのに。
あきらは、周りに皆がいるのが当たり前になっている事を改めて知る。
『いただきます!』
手を合わせて、政宗の作った料理に箸を伸ばす。
相変わらず美味しい…。でも、一人で食べてた時より何倍も美味しい!
思わず笑顔になる。
あー、この卵焼きが絶品なんだよね〜。パクパクと口に運ぶと、斜め前から声がした。
『そんなに、卵焼きが好きなのか?それならこれも食べろ。』
光秀が卵焼きの入った器をあきらに向けて差し出す。
『え、でも…いいんですか?』
『お前のその顔は ちっとも遠慮してる様には見えないが?』
光秀が小さく笑う。
『…じゃ、いいです。』
あきらが口を尖らせ伸ばしていた手を引っ込める。
『そんなに むくれるな。冗談だ。』
ことん、とあきらの膳に皿を置く。
『ふふっ、私も冗談です。』
あきらは にっこり笑うと、その皿から取った卵焼きを 口の中にポイッと入れた。
『ああ、美味しいー!』
こいつ、俺をからかうとは。
美味しそうに卵焼きを頬張るあきらを前に、次はどうやって虐めてやろうかと思案する光秀だった。