第35章 お見舞い…☆光秀
『政宗さん、私も運ぶの手伝います!』
自然を装い、秀吉の手を離す。
少し寂しそうな秀吉に気付かないふりをして、政宗に駆け寄る。
悪いな、と言う政宗から膳を受け取ると広間に入った。
既に集まっていた三成や家康から声を掛けられる。
『もう よろしいんですか?』
『心配されるからって無理してるんじゃないの?』
大丈夫だよ、違うって!と返事をしながら膳を運ぶ。
何度か往復して殆どの膳を運び終わり、自分の分を取りに もう一度広間を出る。
その時、広間に入ろうとしていた光秀と ぶつかりそうになった。
『うわっ!』
『おっと!』
光秀があきらの両腕を掴んで体を受け止める。
『すみません!あ、光秀さん、おはようございます。なんか久し振りですね。』
申し訳無さそうにあきらが言う。
『そうだな。俺は毎夜お前の事を思っていたがな。』
『はっ!?』
慌てて後ずさろうとするが、腕を掴まれたままだったことを思い出す。
う、そんなに力入れて無さそうなのに動けない…。
『あのっ…光秀さん、腕を離して貰えないでしょうか。』
ジタバタと体を動かしながらあきらが訴える。
その姿を見下ろしニヤリと光秀が笑い腕を掴む手に力を入れた。
『嫌だと言ったら?』
『えぇっ!?』
ど、どうすれば…。
『おーい、いつまでそこで思い人同士みたいに いちゃついてんだ。通れねぇ。』
政宗が両手に膳を持ち、不満げな顔で立っている。
『あっ、ごめん!…って、いちゃついてないし!』
首だけ政宗の方に向けて謝る。
そこでやっと光秀が ゆっくりと腕を解いた。
良かった、やっと離してくれた。
すると政宗が、ん、とあきらの前に膳を差し出す。
『ほら、お前のだ。冷める前に さっさと食えよ。』
目の前で湯気が ゆらゆらと揺れ動き、あきらの空腹を刺激する。
『ほい、これはお前のだ。』
光秀の前にも同じ様に差し出し、先に広間に入っていく。
膳を受け取った二人も後に続く。
あ…何処に座ろうかな。
光秀はさっさと信長の横に腰を下ろしていた。
『あきら之丞、ここ空いてるぞ。』
秀吉に声を掛けられ、あきらも光秀の斜め向かいに腰を下ろした。