第34章 お見舞い?☆秀吉
あくる日の朝、部屋の前廊下で。
ぐるぐる。ぶらぶら。ぴょんぴょん。
腰を回し、手首を揺すり、飛び跳ねるあきらの姿があった。
うん、もうお腹も背中も痛く無いや。
本当は、少し前から 歩くぐらい平気だったんだけど、みんながあんまり心配するので、食事は部屋まで運んで貰っていた。
よし、今日は広間で みんなと食べよう!
腰に手を当て、一人で うん、と頷く。
その一部始終を、柱の陰から眺めて笑いを堪える秀吉の姿があった。
あきら之丞の奴、なにをやってるんだ?
具合はどうかと思って見に来てみれば…。
一人、部屋の前で おかしな動きをしている。
いつもああなのか、それとも俺が たまたま見てるだけなのか?
もっと見ていたい気もするが…。
『あきら之丞。』
と声を掛ける。
『あ、秀吉さん!おはようございます。』
腰に当てていた手をサッと下ろしてあきらがお辞儀をする。
笑いを堪えつつ、おはようと秀吉が返す。
『うっ…まさか、見てました?
うーん、なんで秀吉さんには変なとこばっかり見られるんだか…。』
首を傾げながら唸る。
あはは、と笑い、秀吉が自分の唇に指を立て、シーッという仕草をする。
『それじゃ、あきら之丞と俺だけの秘密、な』
なんだか その仕草が色っぽくて思わず見惚れてしまう。
ボーっとしていると、秀吉が ほら、と手を出す。
『のんびりしてると食いっぱぐれるぞ。』
そしてあきらの手を握り歩き出した。
驚き目をパチクリさせていると、
『久し振りに広間に行くだろ。また迷子になられたら困るからな。』
と、秀吉が おどけて言う。
『さすがに朝餉を食べる広間までなら、迷わず行けます。』
口を尖らせて反論するあきらを、にこやかに見つめる。
『本当に可愛いなぁ、お前は。』
『ま、また秀吉さんは そういう事を言う!』
膨れながらもあきらは顔が赤くなる。
『いいんだよ。本当の事だからな。』
そう言うと、ギュッとあきらの手を握りなおした。
あれ、秀吉さん、こないだみたいに焦ってない…?
『あれ?秀吉さん、この間と態度が違いませんか?』
恥ずかしさを隠し、わざと からかうよにあきらが言う。