第32章 お見舞い☆三成
朝餉を食べて お腹が一杯になると、今度は眠気が襲ってきた。
私って本能のままに生きてるっていうか…。
そう思いながらも睡魔には勝てず、ゆっくりと夢の中へ落ちて行った。
…誰かの声がする。
優しい声。私の名を呼んでいるようだ。
『あきら之丞さま…。』
返事をしようとするが声が出ない。
その姿を見ようとするが目も開かない。
『あきら之丞さま、この度は お守り出来ずに申し訳ございませんでした。あなたの美しい肌に こんな傷まで つけてしまって。』
見えないけど、声の主が酷く落ち込んでいるのが解る。
…そんなに自分を責めないで。
『私は剣の腕では他の皆さんに敵いません。その代わり、戦略を立てる事には多少なりとも自信がございました。
今回も、地の利を味方にし相手の戦力も分析した上で勝てると信じておりました。
ですが、おごっていたのです、私は。』
この声…。
『これからは、二度と あなたを傷つけさせないと誓います。もっともっと学んで、誰も太刀打ち出来ないような戦略を考えます。
ですから…。』
この話し方…。
『どうか、また私の名を呼んで私に笑いかけて下さい。
あなたがいなくなったら私は…。』
ん?なんだか話が おかしな方向へ進んでいるような…。
『死なないでください!』
『勝手に殺さないでよ!』
あ、声 出た。
と同時に目も開いた。
『あれ?あきら之丞…さま?』
きょとんとした顔の三成くんが枕元に座っている。
『寝てただけだから!っていうか、これ位の傷じゃ死なないから。』
そう言って体を起こす。
『え?そう…なのですか?いえ、政宗さまが青い顔で『あきら之丞さまが起きない。』と、おっしゃるものですから私は てっきり…。』
慌てながら三成が言う。
まったく。政宗もイタズラが好きなんだから。
『政宗に からかわれたんだよ。私はこの通り、ボロボロだけど元気だよ。さっきも、政宗が作ってくれた朝餉を食べてお腹一杯になって眠くなって寝てただけ。』
そう言うと、安心した顔で三成が 良かった、と呟いた。