第31章 お見舞い☆政宗
うぅー、家康がいる時に気付いてれば。
さすがに いつも朝餉を食べてる広間までは歩けそうに無い。
誰か来てくれるまで待つしかないか。
はぁー、とため息が出たのと同じ時、外から声がした。
『あきら之丞、入るぞ。』
あきらの返事も待たずズカズカと部屋に入ってきたのは…。
『政宗?』
その手に お膳を持っている。お膳に乗った器から、ホカホカと湯気が立っているのが見えた。
ぐ〜〜〜っ!
またもあきらの腹の虫が大きな音で鳴る。
ブハッ、と横を向いて政宗が噴き出した。
『家康から、あきら之丞が目を覚ましたって聞いてな。腹が減ってるだろうと思って、朝餉を持ってきた。食え。
…と、起きれるか?』
お膳を布団の横に起き、あきらの背中を支えながら起こす。
あきらは お膳の方に向き直り、ありがとう!と言うが早いか食べ始めた。
『美味しいっ!政宗の作る料理なら調子悪くても食べられるよ。』
満面の笑みで言うと、心配そうに政宗が言う。
『やっぱり、まだ調子 良くねぇのか?』
しまった、思わず…。
『家康の言った通りだな。』
あきらが、え?という顔をする。
『あきら之丞は「大丈夫」とか「痛く無い」としか言わねぇが、相当 我慢してるみたいだ、ってな。』
あれ、家康にバレてた…。
あきらは、バツが悪そうに えへへ、と笑う。
政宗が言い辛そうに尋ねた。
『顕如の手下に…襲われかけたんだって?』
あきらがピクッとと眉を動かす。
少しの間があって、ボソボソと口を開く。
『…触れられたり…舐められた感覚が はっきり思い出されて…気持ち…悪くて。そのせいもあって調子 悪いのかも。』
俯いていると、不意に政宗が体を乗り出した。
『…醤油、ついてるぞ。』
ペロッとあきらの頬を舐める。
『うへっ!?』
あきらが裏返った声を出す。
『ブッ!なんて声出してんだよ。』
政宗が笑う。
突然のことに、あきらの手から箸が滑り落ちた。
い、今、な、舐めた!?
『少しは忘れられただろ?』
そう言いながら、落ちた箸を拾いあきらに手渡す。
…慰めて くれてる?
『うん、だいぶ忘れた。』