第30章 お見舞い☆家康
そうだったんだ。
まだ何も考えずに周りに甘えてていい頃なのに。
人質なんてものを経験して、怯えながら人の目を気にして過ごして…。
『辛かったね。』
あきらが家康を見つめて言う。
もう 先程の泣き出しそうな姿は消えていた。
『俺の心配はいいから、ゆっくり寝てて。怪我人に心配されるようじゃ、俺も まだまだだね。それじゃ。』
そう言うと、手当の道具を持って家康が立ち上がる。
襖の前まで行って足を止めた。
『でも、あきら之丞に話したら少し楽になった。
…ありがとう。』
『少しでも楽になってくれたなら良かった。』
あきらが答えると、家康は振り返らずに部屋を出て言った。
ぐ〜きゅるるるる〜!
『…落ちついたら、お腹空いてきちゃった。
2日も寝てたってことは…もちろん、2日食べてないんだもんね。』
空腹に気付いた途端、あきらのお腹は 今まで無いほどの音で鳴ったのだった。