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イケメン戦国/偽りの君

第30章 お見舞い☆家康


『子供の頃からだったんだ。それなら、今、怪我してばっかりなのも頷けるかも。』

な、納得してくれている。あきらは ホッと胸を撫で下ろした。

『こないだ診てくれた時、言わなくてごめん。』

あきらの言葉に家康が目を逸らした。

『別に気にしなくていい。誰だって言いたくないことの ひとつやふたつ、あるでしょ。』

家康の…

『家康の言いたくないことって、なに?』

あ、頭で考えてたら口に出ちゃった。
家康は眉を寄せ、

『はぁー?この流れで聞く?』

と呆れたように言った。

確かに。普通なら流すところなんだろうけど。

『他の人には言えない事でも、私には話して欲しいんだ。
私は…家康に信用して欲しいのかも。』

あきらは笑顔で思ったままを口にする。
すると家康が戸惑いがちに目を泳がせた。
その姿が、か弱い子供のようで…今にも泣き出しそうで…。
あきらは体の痛みも忘れて起き上がり、家康を抱き締めていた。

『な!?』

家康が驚き、これでもかと言う程に目を見開いている。
それでも、あきらの腕を振りほどきはしなかった。
…暫く抱き締めた後、あきらが そっと体を離す。

『ごめん、そんな顔させるつもりは無くて…。』

もごもごと口ごもる。
落ち着いたら体の痛みが戻ってきて、痛てて、と呟く。

はぁ、と溜息を吐いて、あきらを布団に横にすると、家康がポツポツと話し出した。

『俺は幼い頃を人質として過ごした。』

え?人質?なんの話!?

『最初は織田家に、次は今川家に。気の休まる暇も無かった。
普通の暮らしはしてたけど、まわりはみんな敵みたいなものだったからね。
向こうの気に入らないことをしないように、ビクビクしながら過ごしてた。
今川が死んで、織田と同盟を組んで、やっと自由になれたけど…もう誰も信用出来なくなってた。
人に弱みを見せないように生きてきたら、いつのまにか ひねくれて…。
自慢じゃないけど、人に子供の頃の話なんかしたことないんだよね、俺。』

一気に話すと、もう一つ はぁ、と溜息をつく。

『この話したのも、あきら之丞が初めて。あぁ、信長さまは当事者だから、もちろん知ってるけどね。』

話し終えた家康は 柔らかく微笑んだ。



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