第30章 お見舞い☆家康
『そんなに かさばる物でも無いし、取り急ぎ…。』
お見舞いの品を布団の横に置いて、羽織で隠す。
『あきら之丞、起きてる?』
襖の外から家康の声がする。
『あ、うん、起きてるよ。どうぞ。』
スーッと襖が開いて、いつもの 素っ気ない顔で家康が入っきた。慌てて起きようとするあきらの肩を押さえる。
『いいから横になってて。丸2日寝込んでたんだから。』
『ありがとう…丸2日?じゃ、今日って帰ってきた翌々日の朝!?』
あきらが驚いて叫ぶ。
『だからそうだって言ってるでしょ。頭も打ってたっけ?』
微妙な顔をしつつも、相変わらずの毒舌が逆に心地いい。
『私、そんなに寝てたんだ。』
『あちこち怪我だらけだったしね。怖い思いして、精神的にも参ってたんでしょ。』
話しながら、家康が腕の布を新しい物に取り替える。
『腕と足は薄皮が剥けてる程度だったから、すぐに治ると思うよ。
じゃ、またお腹と背中 見るから。』
そう言いながら着物の合わせに手を掛ける。
『うわっ!あっ、あの、自分で…やるから。』
あきらは家康の手を掴む。解った、と言って家康が手を離した。
あきらは そっと着物の合わせを開く。
私のこと男だと思ってるんだし診察なんだから!と自分に言い聞かせるものの、恥ずかしさで頬が赤くなる。
『ちょっと触るよ。』
家康があきらの みぞおち辺りに触れると、あきらがピクッと反応する。
『一昨日と比べて、痛みは どう?』
『一昨日ほどじゃ、ない、かな。』
城に帰ってきた日に触られた時は、飛び上がるほどだった痛みは、幾分 軽くなっているらしい。
『良かった。まだ少し跡が残ってるけど、時間が経てば消えると思うから。じゃ、背中も見せて。』
うん、と頷いてコロンと横を向く。
『こっちもだいぶいいみたい。』
そう言って背中の傷に軟膏を塗る。
『もう着物 着ていいよ。』
家康に言われ、急いで着物をかき合わせる。 すると家康があきらに尋ねた。
『ところで…あきら之丞は なんでサラシなんか巻いてるの?』
うっ、とあきらが言葉に詰まる。
『えーと、そのー、子供の頃に怪我してさ。胸元に大きな傷があるんだ…。』
苦し紛れに言うと、家康が噴き出した。
え?なんで笑うの?